親の物忘れが増えた。転倒してから家事が難しくなった。入院をきっかけに、一人暮らしが心配になった――。
そんなとき、「何から手をつければいいのだろう」と戸惑う家族は少なくありません。
介護は、家族だけで抱え込んで始めるものではありません。まずは本人の安全を確かめ、地域の相談窓口につながり、必要に応じて介護保険を使う準備を進めることが大切です。
この記事では、親に介護が必要かもしれないと感じたときに、家族が進めたい最初の7ステップを順番に解説します。
意識がおかしい、片側の手足が動かしにくい、ろれつが回らない、強い胸痛・息苦しさがある、転倒して起き上がれないといった場合は、介護の手続きより受診を優先してください。ためらわず119番、または医療機関へ連絡しましょう。
親に介護が必要になったときの7ステップ
- 今日・今の安全を確認する
- 困りごとと体の変化を記録する
- 地域包括支援センターへ相談する
- 要介護認定を申請する
- 認定調査と主治医意見書に備える
- ケアマネジャーと介護サービスを選ぶ
- サービス開始後も家族で見直す
すべてを一日で終わらせる必要はありません。まずは「相談先を一つ決める」ことから始めましょう。
ステップ1:まずは親の安全を確認する
最初に確認したいのは、親が今日の生活を安全に送れる状態かです。介護が必要かを考える前に、転倒や急な体調悪化を防ぐことを優先します。
確認したいポイント
- 食事・水分をとれているか
- 薬を飲み忘れていないか、重複して飲んでいないか
- トイレへ一人で行けているか
- 立ち上がりや歩行でふらつきがないか
- ガスや火の消し忘れ、戸締まりの不安がないか
- 数日分の食料や必要な薬があるか
- 連絡しても反応がない、普段と話し方が違うなどの変化はないか
本人が一人暮らしなら、電話だけでなく、可能なら一度顔を見に行きましょう。遠方で難しい場合は、近所の親族や信頼できる知人に様子を見てもらえるか相談する方法もあります。
ステップ2:困りごとと変化を記録する
介護が必要かもしれないと感じた出来事を、できるだけ具体的にメモします。これは家族で状況を共有するときだけでなく、医師や相談員に説明するときにも役立ちます。
メモしておくとよい内容
- いつから、どんなことが難しくなったか
- 転倒、物忘れ、服薬忘れなどが起きた回数
- 食事・入浴・排せつ・着替えで手助けが必要な場面
- 通院中の病気、服用中の薬、主治医の連絡先
- 本人が困っていること・嫌がっていること
- 家族ができること、どうしても難しいこと
たとえば「最近物忘れが増えた」だけではなく、「この1か月で同じ買い物を3回した」「薬を飲んだか分からなくなる日が週に2回ある」のように記録すると、状況が伝わりやすくなります。
ステップ3:地域包括支援センターへ相談する
「まだ介護認定を受けるほどか分からない」という段階でも、まず相談してよい窓口が地域包括支援センターです。
地域包括支援センターは、高齢者の暮らし・介護・健康・権利に関する地域の総合相談窓口です。保健師、社会福祉士、主任ケアマネジャーなどが連携し、状況に合った支援を一緒に考えてくれます。
相談できる主なこと
- 介護保険を使うための手続き
- 要介護認定を受けるべきかの相談
- 介護予防や見守りに関する支援
- 認知症が心配なときの対応
- 家族の介護負担や金銭管理の不安
- 虐待や消費者被害など、本人の権利を守る相談
電話では、次のように伝えれば十分です。
「一人暮らしの母が転倒してから家事ができなくなりました。介護保険を使う必要があるか相談したいです。」
相談することは、親を施設に入れると決めることではありません。本人が自宅で暮らし続けるための方法を探す相談でもあります。
ステップ4:要介護認定を申請する
介護保険サービスを継続的に利用するには、原則として市区町村へ要介護認定(要支援認定)を申請します。申請先は、親が住民票を置いている市区町村の介護保険担当窓口です。
申請できる人
- 65歳以上で、介護や日常生活の支援が必要な人
- 40〜64歳で、介護保険の対象となる特定疾病が原因で支援・介護が必要な人
本人が窓口へ行けない場合は、家族が申請できることがあります。地域包括支援センターや居宅介護支援事業所に代行を相談できる場合もあるため、無理をせず確認しましょう。
申請前に確認したいもの
- 介護保険被保険者証
- 健康保険の情報
- 主治医の氏名、医療機関名、連絡先
- 本人確認書類など、自治体が求める書類
必要書類や申請方法は自治体によって異なります。出かける前に電話や自治体サイトで確認しておくと安心です。
ステップ5:認定調査と主治医意見書に備える
申請後は、本人の心身の状態を確認する認定調査と、主治医による主治医意見書をもとに、要支援・要介護の区分が決まります。
認定調査では、歩く・立つ・着替える・排せつする・記憶する・意思を伝えるといった日常生活の状況が確認されます。
親は調査員の前では気を張って、普段よりできてしまうことがあります。できないことを恥ずかしく感じて隠す場合もあります。
家族が同席できるなら、普段の困りごとを落ち着いて補足しましょう。大げさに伝える必要はありませんが、「たまたまできた一日」ではなく、普段どのくらいの手助けが必要かを伝えることが重要です。
ステップ6:ケアマネジャーと介護サービスを選ぶ
認定結果が出たら、実際に利用するサービスを決めます。
- 要支援1・2:地域包括支援センターなどに相談し、介護予防ケアプランを作成
- 要介護1〜5:居宅介護支援事業所のケアマネジャーに相談し、ケアプランを作成
ケアマネジャーは、本人の暮らしや家族の負担を聞きながら、訪問介護、デイサービス、福祉用具、ショートステイなどを組み合わせる専門職です。
最初に伝えたいこと
- 本人が続けたい生活
- 家族が手伝える曜日・時間と、難しいこと
- 医療面の不安、認知症の症状、転倒歴
- 予算の目安
- 本人が「嫌だ」と感じること
サービスを多く使うことが正解ではありません。本人が納得でき、家族も無理なく続けられる組み合わせを一緒に考えることが大切です。
ステップ7:サービス開始後も家族で見直す
介護サービスを始めたら終わりではありません。体調や認知機能、家族の仕事・生活は変化します。合わないと感じたときは、我慢せずにケアマネジャーや地域包括支援センターへ相談しましょう。
定期的に見直したいこと
- サービスを本人が負担に感じていないか
- 転倒や服薬忘れなどの危険が増えていないか
- 家族の睡眠・仕事・心の余裕が保てているか
- 介護費用が家計を圧迫していないか
- 今の要介護度やサービス量が状態に合っているか
まとめ:最初の一歩は地域包括支援センターへの相談
親に介護が必要かもしれないときは、家族だけで正解を出そうとしなくて大丈夫です。
まずは安全を確認し、困りごとをメモしたうえで、親の住む地域の地域包括支援センターへ相談しましょう。必要なら要介護認定を申請し、ケアマネジャーと一緒に支援の形を整えていけます。
早めに相談することは、親の暮らしを守るだけでなく、介護する家族が疲れ切ってしまうことを防ぐことにもつながります。
あわせて読みたい
- 親がデイサービスを嫌がる理由と、家族ができる対応
- 在宅介護と施設介護の違い|費用・家族の負担・選び方を比較
- 親の介護費用はいくら?在宅・施設別に必要なお金を整理
参考情報
※窓口、必要書類、利用できる独自支援は自治体によって異なります。最新情報は親が住む市区町村、または地域包括支援センターで確認してください。


コメント