親の介護が自分に偏り、兄弟で不公平だと感じたら、まず「何を、どれくらい引き受けているか」を書き出しましょう。通院の回数だけでなく、予約、連絡、移動、急な対応まで共有し、担当と期限、できないときの代替を決めることが出発点です。
同じ回数にそろえるより、親の希望と家族それぞれの事情を踏まえ、続けられる分担を考えます。この記事では、話し合いの例文と、家庭に合わせて使える分担表を紹介します。
不公平を感じたら、介護の作業と負担を整理する
通院以外の連絡・準備・急な対応も書き出す
「通院は月に数回だけ」と見えていても、その前後に予約の電話、持ち物の準備、待ち時間、薬の受け取りがあるかもしれません。兄弟が現場を見ていない場合、こうした負担が伝わっていないこともあります。
最近の一週間など、思い出せる範囲で次の項目をメモしてください。
- 作業の内容と実際にかかった時間(移動・待ち時間を含む)
- 夜間の連絡や予定変更など、急に対応したこと
- 立て替えた支出と、仕事・睡眠・自分の生活への影響
- 自分が続けられることと、減らしたいこと
記録は兄弟の点数をつけるためではなく、見直す作業を見つけるために使います。「いつ連絡が来るか分からず休めない」といった、時間だけでは表せない負担も一言添えましょう。
親の希望と、それぞれのできる範囲を確認する
親には、誰に何を手伝ってほしいか、家族でどこまで情報を共有してよいかを、意思を確認できる範囲で聞きます。家族が決めた段取りを一方的に押しつけないようにしましょう。
兄弟には仕事、育児、健康、移動距離などの事情があります。「近くに住んでいるから全部」「長男だから中心」と決めず、対応できる曜日・時間帯・作業を具体的に確認します。
ただし、事情がある人の分を、今の担当者が黙って引き受け続ける必要はありません。誰もできない作業は、未担当として残し、外部の支援も含めて考えます。
兄弟に協力を頼む話し合いの進め方
責める言葉より現状と頼みたい作業を伝える
「全然何もしてくれない」だけでは、相手が何を変えればよいか伝わりにくくなります。今の負担、困っていること、頼みたい作業を分けて伝えてみましょう。
今は私が通院の付き添いと予約、買い物を担当していて、仕事の予定を変更することが増えています。このまま続けるのは難しいです。次の通院の予約と、必要な持ち物の確認を担当してもらえますか。難しければ、できる作業を一緒に決めたいです。
会う時間が取れなければ、短い電話やオンラインでの話し合いでも構いません。事前にメモを送り、「今日は次の通院の担当を決めたい」と議題を絞ると、話を進めやすくなります。
一度に全部決めず、担当・期限・代替を合意する
「できるときに手伝う」では、結局いつもの人が判断し続けることがあります。まず負担の大きい作業を一つ選び、実行する人と返答期限を決めましょう。
次回の予約はお願いできますか。金曜日までに可否を教えてください。難しい場合は、別の日程や担当を検討したいので、分かった時点で連絡をお願いします。
連絡係も一つの担当です。連絡をまとめる人が、すべての予約、催促、穴埋めまで担う形になっていないか確認してください。予定が変わったときは、変更した担当者から関係者へ知らせるなど、調整の仕事も分けます。
近くに住む兄弟と遠方の兄弟で役割を分ける
現地で必要な作業と遠方からできる作業
遠方の兄弟が頻繁に訪問できなくても、担当できる作業はあります。次は分担を考えるための例です。親の希望と、相手先の受付方法に合わせて選んでください。
| 現地で行うことが多い作業 | 遠方から検討できる作業 |
|---|---|
| 通院の付き添い、買い物、生活環境の確認 | 家族の予定表の更新、必要な情報の整理 |
| 親のそばで生活の様子を確認する | 親との定期的な電話、困りごとの聞き取り |
| 窓口への同行、書類の受け取り | 手続きに必要な書類・受付先の調査 |
| 日用品の在庫確認 | 親と確認した日用品の注文、配送状況の確認 |
遠方担当にも「調べて知らせる」「注文から到着確認まで担当する」など、終わりが分かる作業を頼みましょう。注文や手続きは、本人の同意や相手先が求める確認を踏まえて進めます。家族で役割を決めただけで、親の口座や契約を自由に扱えるわけではありません。
連絡方法と引き継ぎを決める
共有メモには、次の予定、誰が対応するか、完了したこと、残っていることを簡潔に記録します。親の医療情報などは必要な範囲で共有し、誰が見られる場所かも確認してください。
担当を替えるときは、「通院をお願い」だけでなく、集合時間、持ち物、連絡先、帰宅後に共有する内容まで引き継ぎます。分からないことは、元の担当者だけに任せず、担当する人が確認する範囲も決めましょう。
仕事の調整が必要な人は、分担と並行して勤務先へ相談してください。休み方の整理には、親の介護で仕事を休むときに使える制度|介護休暇・介護休業の違いと申出方法も参考になります。
そのまま使える介護分担表の記入例
次の表は編集部が作成した架空の家庭の例です。所要時間や頻度は推奨値ではありません。実際の予定と負担に置き換えて使ってください。
| 作業 | 担当 | 頻度・期限 | 時間目安 | 代替担当 | 引き継ぎ方法 |
|---|---|---|---|---|---|
| 通院の付き添い | 姉 | 次回の受診日 | 移動込み3時間(例) | 弟。難しければ支援を相談 | 予約票・持ち物を共有 |
| 次回予約の確認 | 弟 | 受診前の金曜日まで | 20分(例) | 姉。ただし事前に可否確認 | 決まった日時をメモ |
| 日用品の注文 | 遠方の妹 | 月初に在庫を確認して注文 | 30分(例) | 弟 | 注文内容・到着予定を共有 |
| 家族の予定表更新 | 弟 | 変更が決まったとき | 10分(例) | 妹 | 未担当の作業も記載 |
表の下に「全体の見直し:翌月の第1日曜日」のように、見直す日も書きます。入退院や親の状態の変化、家族の仕事・体調の変化があれば、予定日を待たず見直しましょう。
代替担当の名前も、本人の了承を得てから記入します。代替が決まらない場合は「未定」と書き、誰が支援について相談するかまで決めておくと、穴埋めが一人に戻るのを防ぎやすくなります。
立て替えがある場合は、購入前に確認する金額、領収書の残し方、精算する日も話し合って記録します。家族で負担する割合を一律に決めず、親の意思と各家庭の事情を踏まえて合意しましょう。
兄弟の協力が得られないときは、家族だけで抱えない
具体的な依頼にも返答がない場合は、「何の作業を、いつまでに決める必要があるか」を短く伝え、難しいならその旨の返答を求めます。合意できないまま予定だけ迫る場合は、引き受けられない作業を明確にし、担当のケアマネジャーや親が住む地域の地域包括支援センターへ相談してください。
私が対応できるのは土曜日の買い物までです。平日の通院と夜間の連絡は続けられません。兄弟で担当が決まらないので、介護の体制を見直したいです。
相談するときは、親の生活状況に加え、家族の負担や未担当の作業も伝えます。地域包括支援センターは高齢者の総合相談などを担う窓口です。役割は厚生労働省の地域包括支援センターの案内で確認できます。
厚生労働省が掲載する家族介護者支援に関する資料でも、介護者本人の状況を捉えた相談支援が扱われています。親のことだけでなく、「介護している自分が休めない」と伝えて構いません。
窓口は兄弟に協力を強制したり、家族間の争いを必ず解決したりする場所ではありません。利用できる支援や、介護の組み立て直しについて相談しましょう。最初の電話の伝え方は、地域包括支援センターへの相談の仕方|電話の例文・持ち物・相談メモで紹介しています。
よくある質問
兄弟で同じ回数を担当しないと不公平ですか?
回数だけでは、移動や待ち時間、急な対応の負担は比較できません。それぞれの事情も確認し、時間と作業の内容を含めて話し合いましょう。
遠方に住んでいて訪問できなくても役割はありますか?
予定表の管理や日用品の注文などを検討できます。現地担当者への助言だけで終わらず、できる作業の完了まで引き受けられるか確認してください。
兄弟が話し合いに応じない場合、相談してもよいですか?
家族全員が集まるのを待たず、自分が困っている状況を窓口へ伝えましょう。希望する相談方法や対応できる内容は、最初の連絡で確認してください。
まとめ|まずは負担の大きい作業を一つ共有する
親の介護の分担は、作業と負担を見える形にし、親の希望と家族の事情を確認するところから始めます。担当・期限・代替・引き継ぎを決めても、一人が調整を抱えていないか、後から確かめることが大切です。
まずは今つらい作業を一つ書き出し、「次回は誰が、どこまで担当するか」を兄弟に相談してください。引き受けられない部分が残るときは、そのメモを持って介護の相談窓口につなぎましょう。




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