「デイサービスに行ってみない?」と声をかけたら、親に強く断られた。家では困ることが増えているのに、本人は「まだ一人で大丈夫」「そんなところには行かない」と言う――。
デイサービスを勧める家族は、親の安全や孤立、入浴、介護する側の負担を心配しているはずです。一方で、本人にとっては、知らない場所へ行くことや、できなくなったことを認めるように感じることがあります。
大切なのは、無理に説得して勝つことではありません。「なぜ嫌なのか」を一緒に探り、本人が受け入れやすい形を見つけることです。
この記事では、親がデイサービスを嫌がる主な理由と、家族ができる具体的な対応を解説します。
まず知っておきたい:デイサービスを嫌がるのは珍しいことではない
デイサービスは、日帰りで通い、食事、入浴、体操、機能訓練、レクリエーションなどを受けられる介護サービスです。家にこもりがちな人の外出機会になったり、家族が休息や仕事の時間を確保したりする助けにもなります。
ただし、本人にとっては生活のリズムや人間関係が変わる大きな出来事です。「行きたくない」という言葉の奥には、不安、恥ずかしさ、疲れ、過去の経験などが隠れていることがあります。
断られたときは、すぐに「わがまま」や「頑固」と決めつけず、理由を確かめるところから始めましょう。
親がデイサービスを嫌がる主な5つの理由
1. 知らない場所・知らない人が不安
初めての場所で、何をするのか、誰と過ごすのかが分からないと、不安になるのは自然なことです。特に認知症の症状がある場合、環境の変化そのものが大きな負担になることがあります。
「知らない人ばかりで落ち着かない」「何をさせられるのか分からない」という気持ちを、まず否定しないことが大切です。
2. 「自分はまだ介護が必要ではない」と感じている
介護サービスを使うことが、「できない人になった」「家族に迷惑をかける存在になった」と感じられる場合があります。長年、自分で家事や仕事、家族の世話をしてきた人ほど、自尊心が傷つきやすいこともあります。
本人にとっては、デイサービスを断ることが、自分らしさを守る行動になっている場合もあります。
3. 人前で過ごすことやレクリエーションが苦手
「みんなで歌う」「ゲームをする」と聞いただけで、気が進まない人もいます。会話が苦手な人、静かに過ごしたい人、年齢の近い人と一緒に扱われることに抵抗がある人もいます。
デイサービスによって雰囲気や過ごし方は大きく異なります。にぎやかな事業所が合わないなら、少人数で落ち着いた事業所や、機能訓練に力を入れている事業所が合うこともあります。
4. 入浴・排せつなどを人に手伝ってもらうことが恥ずかしい
入浴やトイレの介助は、とてもプライベートなことです。家族にも頼りたくない人が、スタッフに手伝ってもらうことへ抵抗を感じるのは不思議ではありません。
「お風呂に入れてもらえるから行こう」と強く勧めるより、本人が何に抵抗を感じているのかを聞き、事業所の対応をケアマネジャーに確認しましょう。
5. 体力的にきつい・生活リズムを崩したくない
朝の準備、送迎車、長時間の滞在が負担になることもあります。「行きたくない」は、実は疲れや痛み、睡眠不足のサインかもしれません。
利用時間や曜日を減らす、午前だけの利用にする、送迎時間を調整できる事業所を探すなど、負担を小さくできる場合があります。
家族ができる7つの対応
1. まずは「何が嫌なの?」と短く聞く
説得を始める前に、「デイサービスのどこが嫌なの?」「朝が早いのが嫌? 人が多いのが嫌?」と聞いてみましょう。
このとき、「みんな行っている」「家族が困るから」と反論を重ねないことが大切です。
本人が話したことを、まずは「そう感じるんだね」と受け止めます。
2. 「介護に行く」ではなく、本人が得られることを伝える
言葉の選び方で、受け止め方が変わることがあります。
- お風呂が不安な人には「ゆっくりお風呂に入れる場所があるよ」
- 足腰が弱ってきた人には「体を動かす時間を作ってみない?」
- 一人でいる時間が長い人には「昼ごはんを外で食べる感覚で行ってみない?」
- 趣味がある人には「将棋や手芸ができるところもあるみたい」
本人が大事にしていることを出発点にしましょう。
3. 見学・体験利用から始める
最初から週に何回も通う約束をする必要はありません。まずは家族と一緒に見学し、スタッフや利用者の雰囲気を見るだけでも十分な一歩です。
体験利用ができる事業所もあります。利用時間を短くしたり、「合わなければやめていい」と伝えたりすると、本人の不安が和らぐことがあります。
4. 本人が選べる余地を残す
「行くか、行かないか」だけで聞くと、断る答えになりやすいことがあります。
- 「火曜と金曜なら、どちらが楽そう?」
- 「午前だけ試す? それとも見学だけにする?」
- 「AとBの事業所なら、どちらが静かそう?」
選択肢を持つことで、本人が自分で決めた感覚を保ちやすくなります。
5. ケアマネジャーや事業所に、本人の苦手なことを共有する
本人の前では言いにくいことも、ケアマネジャーには正直に伝えましょう。
- 初対面の人が苦手
- 大きな音やにぎやかな場所が苦手
- 入浴の手助けに抵抗がある
- 昼寝の時間が必要
- 特定の話題や対応で気持ちが不安定になりやすい
事前に共有できれば、席の場所や声かけ、利用時間などを配慮してもらえる可能性があります。
6. 初回は、家族が落ち着いて送り出す
家族の不安は本人にも伝わりやすいものです。「大丈夫かな」「絶対に行ってね」と何度も言うより、「帰ってきたらどんなところだったか聞かせてね」と短く送り出しましょう。
7. 合わなければ、サービスや事業所を変える
一度行って合わなかったからといって、デイサービスそのものが合わないとは限りません。スタッフとの相性、利用者の雰囲気、送迎時間、活動内容が合っていない可能性があります。
別の事業所、訪問介護、訪問リハビリ、短時間の通所サービスなども含めて、ケアマネジャーに相談しましょう。
逆効果になりやすい声かけ
- 「みんな行っているんだから、あなたも行きなさい」
- 「家にいても何もしていないでしょう」
- 「家族が困るから、絶対に行って」
- 「もう一人では何もできないんだから」
本人を責める形ではなく、主語を「私」にして伝えると、ぶつかりにくくなります。
「私も仕事があって、ずっと一緒にはいられないのが心配なんだ。安心して過ごせる方法を一緒に考えたい。」
家族の負担も、介護の大切な判断材料
デイサービスは、本人のためだけのサービスではありません。家族が休む時間、仕事を続ける時間、ほかの家族と過ごす時間を確保することも、介護を長く続けるために必要です。
「親が嫌がるから」と家族がすべてを背負うと、いずれ心身ともに疲れ切ってしまいます。本人の希望を尊重しながらも、家族の限界をケアマネジャーや地域包括支援センターへ伝えてください。
早めに専門家へ相談したいケース
- 服薬忘れや火の消し忘れが増え、安全面が心配
- 転倒を繰り返している
- 介護を断ると怒鳴る、暴力があるなど、家族が危険を感じる
- 物忘れや判断力の低下が急に進んだように見える
- 家族が眠れない、仕事を休み続けている、気持ちが限界に近い
急な意識の変化、ろれつが回らない、片側の手足が動かしにくいなどは、介護の相談より医療機関への連絡を優先してください。
まとめ:嫌がる理由を知ることが、受け入れやすい形につながる
親がデイサービスを嫌がるときは、わがままではなく、不安や自尊心、体力面の負担が背景にあることがあります。
このため、少しのことで嫌がることも多いです。体力が落ちているだけでも外に行きたがらないこともよくあります。
まずは本人の言葉を受け止め、見学や短時間利用から始めてみましょう。合わなければ、別の事業所や別のサービスを選ぶこともできます。
本人の希望と家族の負担の両方を大切にしながら、無理なく続けられる支え方を探していくことが大切です。
あわせて読みたい
参考情報
※サービス内容や体験利用の可否は事業所ごとに異なります。利用を検討するときは、担当のケアマネジャー、地域包括支援センター、または事業所へ確認してください。



コメント